●命がけの取材に頭が下がるなー

西谷文和さん
憎しみの連鎖断ち、子どもや難民支援を 「テロとの戦い」疑え 新刊でシリアの現状伝える /大阪
毎日新聞2017年4月18日
泥沼化するシリア内戦。米トランプ政権によるミサイル攻撃もあった。そこで暮らす人はどんな思いなのか。本紙夕刊に「続・地球の歩き方」を連載しているジャーナリスト、西谷文和さんの新刊「『テロとの戦い』を疑え~紛争地からの最新情報」は、戦火に巻き込まれ、逃れた人たちに避難先などで会い、その視点から、なぜ戦争が起こり、「テロとの戦い」が強調されるのかを考えさせる。
 西谷さんは13年前にジャーナリストに転身。その前からアフガニスタン、イラクなどを取材、内戦後のシリアにも何度も入った。
受け入れ阻む壁
 2016年2月、西谷さんはトルコ・シリアの国境の町を訪ねて驚く。前年はなかった「壁」ができていた。難民の流入を阻むためだ。シリアでは国民の半数が国内外に避難、国境の町は元の3倍の人口となり、難民が住民より多くなった。受け入れも困難になっているのだ。

ドラム缶にガソリンなどを詰め、ヘリコプターでばらまく「タル爆弾」による火事で大やけどをした8歳の男の子=シリアの国境に近いトルコの町で2016年2月、西谷文和さん撮影
 戦争で大けがをした人だけ、入国を許される。手術を受けても病院は満員。全身に大やけどをし、顔の皮膚が焼けただれ、まぶたもなくなった50歳の女性は一命をとりとめた1カ月半後、退院させられ、シリアに移送された。「死刑宣告にも等しい」と西谷さんは憤る。
家族を支える子
 難民を訪ねると、親族を失った子が7、8割、大けがをした子も少なくない。学校にも行けない子が多いが、ある男の子は「行きたくない。僕が仕事しないと家族が困るから」と、午前4時から午後6時までゴミ拾いをして、わずかな生活費を稼ぐ。西谷さんは取材の傍ら、粉ミルク、毛布などといった支援物資を届けている。
 一方で西谷さんは「ISはアメリカのイラク戦争で誕生した」と喝破。アラブの春にも大国の思惑が絡んでいたことを解き明かす。
北風より太陽
 平和の切り札は「北風より太陽」。日本にできることは、テロの恐ろしさを強調し、強硬路線を取る米国などに加担して憎しみの連鎖を招くことではなく、子どもへの援助や難民支援であるべきだと説く。アフガニスタンなど紛争地で障害を負った子どもに医療支援をしているドイツのNGOを紹介する。自国第一の風潮が世界に広がる中、「多くの人々が立ち上がって抗議すれば、軌道修正は可能だ」と希望を捨てない。
 A5判、187ページ、1600円(税別)。かもがわ出版(075・432・2868)。

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